不動産コラム
一宮市で不動産相続した実家、そのまま放置でかかる恐ろしいコスト

相続した実家は、できるだけ早い段階で「持ち続けるのか、手放すのか」の方向性だけでも決めておく価値があります。理由は単純で、空き家は所有しているだけで税金・光熱費・保険料が毎年出ていき、加えて法律上のリスクまで背負い込むことになるからです。いちのみや不動産相続相談室を運営するじぶん不動産株式会社にも、一宮市内で「親の家を相続したものの、何から手をつければいいのか分からないまま数年が過ぎた」というご相談をいただくことがあります。維持費を確認して、その負担の大きさに気付かれるケースもあります。
この記事では、誰も住まない実家を放置したときに発生する具体的なコストの内訳、一宮市ならではのリスク、そして今後の扱い方の選択肢を整理しました。売却を決めていない段階の方こそ、判断材料として読み進めてください。
目次
1. 実家をそのまま放置して発生する金銭的負担
空き家は「住んでいないのだから、お金はかからない」という感覚とは裏腹に、条件によっては年間数十万円の維持費が発生することがあります。所有権が自分にある以上、税金も保険も建物の管理責任も、そのまま引き継がれるためです。放置している期間は、その金額を毎年支払い続けていることと同じという点を、まず押さえておきたいところです。
毎年支払い続ける固定資産税と都市計画税
最も確実に発生するのが固定資産税と都市計画税です。固定資産税の税率は1.4%、一宮市の都市計画税率は0.3%。都市計画税は市街化区域内に所在する土地・家屋に課税されるため、物件の所在地によって課税の有無が異なります。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、200平方メートル以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されます。この軽減があるからこそ、多くの方が「とりあえず建物を残しておこう」と考えるわけです。なお、実際の税額は評価額から課税標準額を求めて算出するため、詳細は毎年届く納税通知書で確認してください。
ただし、建物が古くなれば建物分の税額は下がっても、土地の評価額はそれほど変わりません。誰も住まない家に対して、住んでいた頃とほぼ同じ税金を払い続ける構図が生まれます。
建物の維持管理にかかる水道光熱費や修繕費
次に見落とされがちなのが、建物を保つための実費です。電気と水道を完全に止めてしまうと、換気も掃除もできず、通水しないことで排水管の封水が切れて悪臭や害虫の侵入を招きます。そのため、基本料金だけでも契約を残す方が結果的に安全というのが実務上の判断です。
さらに、人が住まない家は想像以上のスピードで傷みます。換気されない室内には湿気がこもってカビや木部の腐朽が進み、庭木や雑草も年に数回は手を入れる必要があります。
- 電気・水道の基本料金:年間およそ2万~3万円
- 草刈りや庭木の剪定(年2~3回の外注):年間3万~10万円
- 雨漏り、外壁、給排水設備などの突発的な修繕:数万円~100万円超
修繕費は発生時期が読めない点が厄介です。台風や豪雨の後に瓦が飛んでいた、という連絡が近隣から入るケースもあります。
万が一に備え続けるための火災保険料や地震保険料
空き家であっても火災保険を外すという選択は現実的ではありません。放火や漏電による火災、台風での建物損壊は起こり得ますし、隣家に被害を及ぼせば賠償問題に発展します。
注意すべきは、空き家になると従来の住宅向け火災保険をそのまま継続できない場合があるという点です。引受の可否や保険料、補償内容は建物の利用状況や保険会社によって異なるため、空き家になったことを保険会社・代理店へ伝えて契約内容を確認する必要があります。また、地震保険は居住のために使用する建物が対象とされており、使用状況によっては対象外となる場合があります。
年間の維持費はいくらになるのか
以下は維持費をイメージするためのモデルケースです。実際の固定資産税・都市計画税は納税通知書、保険料や管理費は各契約・見積もりで確認してください。
※表は左右にスクロールして確認することができます。
| 費目 | 年間の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 物件により異なる | 評価額・所在地・特例の適用状況で変動 |
| 電気・水道の基本料金 | 2万~3万円 | 換気・通水のため契約を維持 |
| 庭木の剪定・草刈り | 3万~10万円 | 外注する場合の相場 |
| 火災保険等 | 契約条件により異なる | 空き家は引受条件が変わる場合あり |
| 通いの交通費・雑費 | 1万~5万円 | 遠方在住だとさらに増加 |
| 合計 | 年間数万円~数十万円 | 突発的な修繕費は別途 |
?ポイント:ここで意識したいのは、5年、10年という時間軸で捉え直すことです。仮に年間30万円の維持費がかかるとすれば、10年で300万円。これは相続時点で売却していれば手元に残っていたはずの現金であり、さらに建物の劣化によって将来の売却価格そのものも下がっていきます。判断を先延ばしにするコストは、支出と資産価値の目減りの両面から効いてくると考えてください。
2. 一宮市で空き家を放置する法的なリスク
金銭的な負担以上に重いのが、法律上のリスクです。空き家の管理不足は、行政からの指導・勧告、税負担の急増、さらには近隣への損害賠償にまで直結します。2023年12月13日に施行された改正空家法により、行政が動ける範囲は以前よりも明確に広がりました。「危険な状態になってから対処する」では間に合わない制度設計に変わっている、という認識が必要です。
「特定空家」に指定されると固定資産税が大幅に跳ね上がる
倒壊のおそれがある、衛生上著しく有害、著しく景観を損なっているといった状態の空き家は、市町村から「特定空家等」に指定される対象となります。指定後は助言・指導、勧告、命令、行政代執行という段階を踏んで措置が進みます。
このうち勧告を受けた時点で、先ほど触れた住宅用地の特例が適用されなくなります。小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が通常6分の1に軽減されているため、特例が外れると課税標準が大きく上がり、税負担が重くなる可能性があります。ただし、税額には負担調整措置なども関係するため、一律に6倍になるわけではありません。
さらに改正空家法では、特定空家になるおそれのある段階の空き家を「管理不全空家等」として指導・勧告できる仕組みが新設されました。窓の破損や雑草の繁茂といった管理状態の悪化は、管理不全空家等と判断する際の要素になり得ます。市町村から指導を受けても状態が改善されず、勧告に至った場合には、住宅用地特例の対象外となります。倒壊寸前の状態まで待たずに手が入る、という点が改正の要です。
老朽化による倒壊やご近所トラブルによる損害賠償
民法717条では、建物など土地の工作物の設置・保存の瑕疵によって他人に損害が生じた場合、占有者や所有者が損害賠償責任を負う場合があると定められています。空き家の所有者も、適切な管理を怠った結果として第三者に損害を与えれば、賠償責任を問われる可能性があります。
- 台風で飛んだ瓦や外壁材が隣家の車や窓を破損させた
- 老朽化したブロック塀が倒れ、通行人がけがをした
- 敷地の樹木が越境し、近隣の建物や電線を傷つけた
- 不法投棄やごみの堆積で、悪臭・害虫が発生した
一宮市には住宅が密集し、隣家との距離が近いエリアもあります。人身事故につながれば、高額な損害賠償に発展する可能性も否定できません。空き家の保険に個人賠償責任の特約が付いているかどうかも含め、契約内容の確認は早めに済ませておきたいところです。
一宮市の空き家に関する制度と自治体の対応状況
一宮市は平成29年3月に「一宮市空家等対策計画」を策定し、その後、計画期間を含めた改定を行っています。あわせて「一宮市特定空家等判断基準」を公表しており、どのような状態が特定空家に該当するのかを市として明文化している点は押さえておくべきでしょう。
また、市は関係団体と「一宮市における空き家等対策に関する協定」を締結し、空き家の発生予防から利活用までを官民連携で進めています。空き家バンクの運営、老朽空き家の解体工事費への補助、空き家に関する相談窓口の案内なども実施中です。
つまり、一宮市は空き家の存在を把握し、支援と指導の両輪で動いている自治体だということ。近隣からの通報をきっかけに市が現地確認に入り、所有者へ連絡が来るという流れは、決して他人事ではありません。
?ポイント:行政から指導や勧告の連絡が届いてから動き出すと、選択肢はどうしても狭まります。解体を急かされる、税負担が増えた状態で売却を検討することになる、といった具合に、条件の悪い選択を迫られやすくなるためです。まだ何も言われていない今の段階が、最も自由に方針を決められるタイミングだと捉えてください。
3. まだ決められなくても知っておきたい3つの選択肢
実家の扱い方は、大きく「維持する」「貸す」「売る」の3つに集約されます。すぐに結論を出す必要はないものの、それぞれのコストと手間を知らないままでは比較のしようがありません。選択肢を知ったうえで「今は維持する」と決めるのと、決められないまま放置するのとでは、数年後の結果が変わります。
定期的に通って管理しながら維持し続ける
思い出のある家をすぐに手放したくない、兄弟姉妹との話し合いが済んでいない。そうした事情があるなら、適切に管理しながら保有するのも現実的な選択です。
管理の基本は、月1回程度の換気、通水、郵便物の回収、庭の手入れ、外観の点検。遠方にお住まいで通うのが難しければ、月額5,000円~1万円程度の空き家管理サービスを使う手もあります。
ただし、維持を選ぶなら期限を切っておくことをおすすめします。「2年後の法要までに家族で結論を出す」といった区切りがないまま、そのまま年月が過ぎてしまうケースもあります。
リフォームして賃貸物件として貸し出す
家賃収入を得ながら建物を保つ方法です。人が住むことで劣化の進行が緩やかになり、住宅用地の特例も維持されます。
一方で、初期費用の負担は小さくありません。築40年を超える戸建てを貸すには、水回りの交換や内装の刷新で数百万円規模の工事が必要になることも。空室期間のリスク、設備故障への対応、退去後の原状回復といった大家としての実務も発生します。一宮市は名古屋方面への通勤圏として一定の賃貸需要がありますが、エリアや駅距離で差が出るため、投資回収の見込みは事前に見極めておきたいところです。
維持費と手間を手放すために売却を検討する
維持費も管理の手間も一度に解消できるのが売却です。まとまった現金が入るため、相続人が複数いる場合の分割もしやすくなります。
税制面での後押しもあります。相続した空き家を一定の要件のもとで売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円(対象の家屋・敷地を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があり、適用対象は令和9年12月31日までの譲渡とされています。
ただし、この特例には昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物でないこと、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること、売却代金1億円以下であること、相続時から譲渡までに事業・貸付け・居住の用に使っていないことなど、複数の要件があります。一度賃貸に出すと適用できなくなる可能性があるため、売却と賃貸を比較する段階で税理士等に確認しておくことが重要です。
一宮市には老朽空き家の解体工事費を補助する制度もあります。現に使用されていない、延べ床面積の2分の1以上が居住用だった、不良住宅と同等と判定されたなどの要件を満たす空き家について、解体工事費の5分の4(上限20万円、予定5戸・先着順)が補助される仕組みです。ただし2026年度分は、2026年8月6日時点で予算上限に達する見込みと案内されています。年度ごとに受付状況や予算が変わるため、利用を検討する場合は一宮市の公式サイトで最新情報を確認するか、住宅政策課へ相談してください。
3つの選択肢を比較する
※表は左右にスクロールして確認することができます。
| 項目 | 維持する | 貸す | 売る |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | ほぼ不要 | 数十万~数百万円 | 仲介手数料など |
| 毎年の支出 | 税金・管理費が継続 | 固定資産税・修繕費 | 売却後は不要 |
| 収入 | なし | 家賃収入 | 売却代金 |
| 手間 | 月1回程度の管理 | 入居者・設備対応 | 引き渡しまで |
| 向いている方 | 結論を保留したい | 資産として活かしたい | 負担を清算したい |
?ポイント:どれが正解かは、物件の状態と相続人の事情によって変わります。判断の分かれ目になるのは、建物にあと何年の耐用が見込めるか、そして相続人が管理に関与し続けられるかの2点。遠方在住で通うのが難しく、建物の傷みも進んでいるという条件が重なるなら、早い段階で売却を軸に検討したほうが、金銭的にも精神的にも負担は軽くなります。
出典:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
出典:老朽空き家の解体工事に関する補助金制度について|一宮市
4. 迷っているなら現状の価値を把握することから始めよう
方針が決まらない最大の理由は、判断に必要な情報が手元にないことです。実家がどのくらいの価格で売れそうなのか、貸せる建物なのか、解体するとどうなるのか。ここが分からないままでは、家族で話し合っても結論は出ません。査定を受けることは売却の決断ではなく、比較のための材料集めだと考えてください。
まずは不動産査定で売却価格の目安を把握する
査定価格は、現在の市場でどの程度の売却価格が見込めるかを検討するための目安です。実際の成約価格を保証するものではなく、相続税や固定資産税などの税務上の評価額とも異なります。この前提を押さえたうえで結果を見ると、金額だけでなく物件の現状も具体的に見えてきます。土地の形状や接道状況、建物の劣化度合い、周辺の成約事例。こうした情報は、維持・賃貸・売却のどれを選ぶにしても判断の土台になります。
査定には机上査定と訪問査定があり、おおよその金額を知りたい段階なら机上査定で十分です。売却を約束するものではないため、情報収集の一環として依頼できます。
相続人が複数いる場合は、査定根拠を示した資料を家族で話し合う際の共通材料にできます。「思ったより高い」「想像より安い」という各自の感覚を、同じ数字と根拠にそろえられるためです。
一宮市の不動産事情に強い専門家に相談してみる
相続がからむ不動産は、通常の売買とは進め方が異なります。相続した不動産を売却するには、相続登記など権利関係を整理しておく必要があります。賃貸を検討する場合も、共有者がいるときは契約内容や必要な同意について事前に確認しておくことが欠かせません。
なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則3年以内の申請が必要です。2024年4月1日より前の相続で、それ以前から相続したことを知っていた未登記の不動産については、原則として2027年3月31日が期限となります。正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料の対象となる可能性があるため、名義の確認は優先度の高い作業です。
相談先は、一宮市の地域事情を把握しているかどうかを基準に選んでください。市街化区域と市街化調整区域の線引き、エリアごとの需要差、道路付けによる評価の違いは、地元で実績を積んだ会社でなければ精度の高い判断ができません。司法書士や税理士と連携できる体制があるかも確認しておくと安心です。
?ポイント:相談のタイミングは「売ると決めてから」ではなく「迷っている今」が適しています。方針が固まる前に現状を把握しておけば、家族の状況が変わったときにも素早く動けるためです。当社では売却を前提としないご相談も承っています。査定結果をお伝えしたうえで、時間をおいて改めてご連絡をいただくケースもあります。
5. まとめ
相続した実家を「とりあえずそのまま」にしておくと、税金や管理費が毎年積み上がり、建物の劣化とともに資産価値も下がっていきます。加えて、改正空家法のもとでは管理不全空家等として勧告を受けた場合に住宅用地の特例が外れ、固定資産税等の負担が大きく増える可能性もあります。近隣への損害賠償リスクも含めれば、放置という選択が最もコストの高い判断になりかねません。
とはいえ、今すぐ売却を決める必要はありません。維持する、貸す、売るという3つの選択肢を並べ、それぞれの費用と手間を把握したうえで、家族が納得できる結論を出せば十分です。そのための第一歩が、実家の現在価値を知ることになります。
いちのみや不動産相続相談室を運営するじぶん不動産株式会社は、一宮市エリアに密着し、相続や不動産に関するお悩みに数多く向き合ってきました。査定のご依頼はもちろん、「まだ何も決めていない」という段階のご相談も歓迎しています。実家の扱いに迷いを抱えている方は、判断材料をそろえるところから、お気軽にお声がけください。

